ニュースの概要
比較サイトのセレクトラが、工事費が無料になる光回線プランを8つ取り上げ、注意点を解説した。記事の主な論点は、工事費が本当にゼロになるプランと、月額料金からの割引で相殺される「実質無料」の違いである。実質無料は、工事費を分割で請求し、毎月同額を値引きして帳消しにする仕組みだ。そのため、途中で解約すると未払い分の工事費が残る場合がある。キャンペーンの適用条件や、他社からの乗り換え時の負担軽減策にも触れ、契約前に確認すべき点を整理している。単に「無料」の文字だけで選ぶと、見えない負担を抱える可能性があるという指摘である。
引用元: 工事費無料の光回線プラン8選|注意点・実質無料との違い・本当にお得?(セレクトラ)
分析・見解
「無料」と「実質無料」は会計上まったく別物
工事費の無料には、大きく二つの型がある。一つは、事業者が最初から請求しない型である。もう一つは、いったん分割で請求し、月額から同額を値引きして相殺する型だ。後者が、いわゆる実質無料である。
見た目の支払額は同じでも、中身は違う。実質無料は「利用を続けること」が条件の割引である。たとえば工事費が約2万円なら、24回や36回に分けて請求し、同じ回数だけ割り引く。途中で解約すれば、割引が止まり、未払いの分割金だけが手元に残る。つまり無料ではなく、長期利用を前提にした「前借り」に近い。
違約金の廃止後も縛りが消えない理由
2022年の制度改正で、違約金の上限は大きく下がった。通信サービスの解約負担は、以前より軽くなっている。ところが、工事費の残債は違約金とは別の扱いだ。これは制度の網にかからず、事業者ごとの契約条件に残る。
結果として、利用者を縛る力は形を変えて生き残った。違約金が1万円台から1,000円程度に下がっても、工事費残債が1万円以上残る契約では、実質的な乗り換えコストはさほど変わらない。この点は、携帯電話の端末割引が「返却前提の分割払い」で縛りを作る構造とよく似ている。通信業界は、縛りの置き場所を契約から端末や工事へ移してきたと言える。
競争の軸は工事費から月額と速度に移る
工事費無料はもはや目新しい特典ではない。大手各社が横並びで実施しているため、差別化にならなくなった。そのため、事業者の関心は、10Gbpsなどの高速プランや、スマホとのセット割引へ移っている。
実際、光回線の乗り換え需要は、引っ越しや更新月に集中する。獲得競争は、工事費やキャッシュバックのような一時的な負担軽減策で激しくなる。しかし、利用者が長く使う理由は、月額の安さと通信の安定である。入口の無料より、出口の満足度が解約率を左右する。
比較サイトの記事を読むときの注意点
比較記事の「お得」は、掲載条件に左右される。多くの比較サイトは、申込みに応じて事業者から成果報酬を受け取る。そのため、キャンペーンの金額が大きいプランほど目立ちやすい。これは記事が誤りという意味ではない。読む側が、金額の大きさと、自分の利用年数に合うかを別々に確かめる必要があるという意味である。
三年以内に引っ越す予定があるなら、実質無料のプランは割に合わない可能性が高い。逆に、五年以上同じ場所で使うなら、実質無料でも損は小さい。つまり、お得かどうかは商品ではなく、自分の居住予定で決まる。
ビジネスへの影響
事務所の回線は「使う年数」で選ぶ
法人や個人事業の事務所移転は、数年ごとに起こりやすい。拡大や縮小、家賃の見直しで移転する可能性がある場合、実質無料の工事費は足かせになる。契約前に、分割回数と、解約時の残債の扱いを書面で確認したい。
あわせて、更新月の管理も欠かせない。契約の更新月と移転予定を同じ台帳に載せておけば、ムダな残債を避けられる。小さな会社ほど、この管理を担当者の頭の中に置きがちである。
比較の物差しは三年間の総支払額に置く
月額料金だけを並べると、判断を誤る。工事費、機器のレンタル料、キャッシュバックの受取時期、割引の終了後の料金を足し、三年間または五年間の総額で比べるのが確実だ。
キャッシュバックは、申請が必要なものが多く、受取りまで数か月かかる。期限を過ぎて受け取れない例もある。申込時に、受取り方法と時期を控えておくと安全だ。
回線を売る側の事業者が押さえる点
回線の再販や代理店を営む事業者は、「無料」の表記に注意が必要である。実質無料を無料と書けば、誤認を招く恐れがある。説明では、分割と割引の仕組みを一文で添えると、信頼につながり、解約時のトラブルも減る。